「飛鳥・藤原の宮都」世界遺産へ
「飛鳥・藤原の宮都」世界遺産へ 奈良が日本の始まりの地として世界に認められる歴史的瞬間
奈良県にとって大変うれしいニュースを振り返りたいと思います。
先週、世界文化遺産への登録を目指してきた「飛鳥・藤原の宮都」について、ユネスコの諮問機関であるイコモス(ICOMOS=国際記念物遺跡会議)が、最も高い評価となる「記載」を勧告しました。
この勧告は、世界遺産への登録がふさわしいという評価を意味します。来月、韓国・釜山で開かれる世界遺産委員会で正式決定されれば、「飛鳥・藤原の宮都」は世界文化遺産に登録される見通しです。
奈良県民として、そして奈良の歴史や観光に関わる者として、これほど喜ばしいことはありません。
今回の勧告の意義は、単に新たな観光名所が増えるという話ではありません。
世界が、「日本という国がどのように形づくられたのか」を示す飛鳥の価値を正式に認めたことにあります。
飛鳥時代は、日本が豪族中心の社会から律令国家へと変化していった時代です。中国や朝鮮半島との交流を通じて政治制度や仏教、文化を取り入れながら、現在の日本国家の原型がつくられました。
その舞台となったのが飛鳥であり、藤原京でした。
今回の「飛鳥・藤原の宮都」は、明日香村を中心に橿原市、桜井市に広がる19の遺跡で構成されています。
天武天皇らが政務を執った飛鳥宮跡、日本初の本格的な都とされる藤原宮跡、日本最古の本格寺院とされる飛鳥寺跡、そして石舞台古墳や高松塚古墳、キトラ古墳など、日本史の教科書で誰もが目にした遺跡が含まれています。
これらは個別に価値が高いだけではありません。
宮殿、寺院、古墳が一体となり、「国家形成の過程」を物語る世界でも類例の少ない遺産群として評価されました。
今回の勧告を行ったイコモスは、ユネスコの世界遺産委員会に専門的な助言を行う国際機関です。
世界遺産候補地について現地調査や学術的な審査を行い、「記載」「情報照会」「記載延期」「不記載」の4段階で評価します。
このうち「記載」は最も高い評価であり、日本ではこれまで「記載」勧告を受けた案件はすべて世界遺産に登録されています。
今回の結果は、まさに“ほぼ満点”ともいえる評価です。
しかし、ここまでの道のりは決して平坦ではありませんでした。
国内候補となったのは2007年。そこから実に19年もの歳月がかかっています。
遺跡の調査や研究を進めながら、その価値を世界に伝えるための推薦書を作成し、保護措置の強化や史跡範囲の見直しも行われました。
推薦書は何度も書き直され、一時は登録が遠のいた時期もありました。
それでも諦めることなく取り組みを続けてこられた明日香村、橿原市、桜井市をはじめとする地元自治体や研究者、地域住民の皆さまの努力が、ようやく世界に認められたのです。
観光面での意義も非常に大きいものがあります。
奈良県にはすでに「法隆寺地域の仏教建造物」「古都奈良の文化財」「紀伊山地の霊場と参詣道」という3つの世界遺産があります。
今回登録されれば奈良県は4件の世界遺産を有する全国屈指の歴史文化県となります。
特に飛鳥地域は、東大寺や奈良公園と比べると訪問者数が少なく、「通過型観光」が課題とされてきました。
世界遺産登録を契機に、国内外から多くの人が飛鳥地域を訪れ、奈良県南部の魅力が広く知られるきっかけになることが期待されます。
一方で、世界遺産登録はゴールではありません。
文化財を守りながら観光振興を進めること、地域の暮らしと観光を両立させること、交通や受け入れ環境を整えることなど、新たな課題も生まれます。
私たちは単に観光客を増やすだけではなく、この貴重な歴史を次の世代へ受け継いでいく責任があります。
飛鳥は、日本という国の始まりの地です。
今回の勧告は、その価値が世界に認められた歴史的な出来事と言えるでしょう。
来月の世界遺産委員会での正式登録を心待ちにしながら、この素晴らしい歴史遺産を未来へつないでいきたいと思います。
