奈良県木造建築の担い手育成 製材所や林業振興に向け奈良県議会で質問

奈良県議会議員・永田ゆづる(36歳)|奈良市・山添村選出|です。

奈良県議会議員として、本会議に続き、先日の予算委員会で「木造建築の担い手育成」や「木材生産量の増加」を軸に質疑を行いました。奈良県は日本最古の木造建築である法隆寺をはじめ、歴史的にも木と深い関わりを持ち、また「吉野材」に代表される高品質な県産木材を誇ります。しかしながら近年、林業や木造建築の担い手不足や、需要そのものの伸び悩みなど、様々な課題が指摘されています。そうした現状を踏まえ、以下のように奈良県としての政策を進めるべきだと考えます。

第一に、「木造建築に特化した設計者の育成強化」です。県では建築士会と連携して担い手育成の研修を実施していますが、より実践的かつ長期的なカリキュラムが求められています。岐阜県の県立森林アカデミーのように、林業から製材、設計・施工まで一貫して学べる場を県内に整備することが理想ですが、一朝一夕に実現できるものではありません。そこでまずは既存の研修を拡充し、木造に特化したコースや実習の時間を十分に確保するなど、建築士が木造建築の魅力と技術を体系的に学べるようにすることが急務です。さらに、建築の経験がない若者や異業種からの転職希望者に対しても門戸を広げ、木造分野へ参入しやすい体制を整えることが必要でしょう。

第二に、「住宅購入者への支援策の見直しと拡充」です。現在、県産材を使用した住宅購入者への補助制度として、構造材で最大30万円、内装材で最大20万円などの支援があります。しかし、木材生産量を抜本的に増やすには、構造材の需要を拡大する施策が重要です。構造材の使用量が増えれば、住宅の柱や梁が見える機会も多くなり、住む人が木の良さを五感で体験できるだけでなく、林業や製材業、大工など関連分野への波及効果も大きくなると考えられます。そこで、たとえば使用した木材の体積や面積に応じて補助金を段階的に増やすなど、柔軟な仕組みを導入することが検討に値します。また、工務店が代理申請をする際のインセンティブが十分でないと補助制度自体が活用されにくいという現状もあるため、手続きの簡素化や補助額の上乗せなど、利用しやすい制度設計を行うことが望まれます。

第三に、「県内でのJAS材認証体制の整備」です。木造建築では構造計算を行うため、品質や性能が証明された材(JAS材)の需要が高まっていますが、奈良県内には実質的に稼働するJAS認定工場がないため、他府県まで材を運んで認証を受けざるを得ないケースがあります。これはコスト面・時間面の負担となり、県産材利用拡大の大きな障壁です。国では中小の製材所が共同でJAS認定を受ける制度の整備を進めていますが、県としても、必要な設備導入への助成強化や、複数事業者の共同利用を後押しする仕組みづくりなど、より踏み込んだ支援が求められます。県内にJAS認定工場を増やすことは、川上から川下まで一貫した生産体制を築き、奈良の木を県内外へ円滑に供給する上で欠かせないステップです。

第四に、「大工をはじめとする現場の担い手育成」です。木造住宅や木製店舗を増やしても、実際に施工する大工が不足していれば建設は進みません。全国的にも大工の数は減少傾向にあり、奈良県内でも20年で半減している実態があります。そこで、若い人材が大工を目指す仕組みづくりが不可欠です。たとえば、工務店が大工志望の社員を採用し、ベテラン棟梁がOJTで指導する取り組みに対して、県として支援や奨励策を用意することが考えられます。また、大工技能士などの国家資格を持つ技術者を増やすため、資格取得にかかる費用の一部補助や研修機会の拡充なども検討すべきでしょう。民間の先進的な取り組みを注視し、そこに行政がどのような形で後押しできるかを具体的に検討することが重要です。

以上のように、林業の活性化と木造建築の推進には、①設計者の育成強化、②住宅購入支援策の見直し・拡充、③JAS認定体制の整備、④大工をはじめとする担い手の育成、という4つの柱を総合的かつ戦略的に進めることが肝要です。奈良県は歴史的にも木と深い結びつきを持ち、質の高い木材資源が豊富に存在する強みを生かせるポテンシャルがあります。今後、県としてはこれらの施策を段階的に拡充し、川上から川下まで一貫した木材の流通・利用体制を築くことで、木材生産量を増やし、地域経済や雇用の活性化につなげていくべきです。そのためにも、国や他県の事例を参考にしつつ、民間事業者や業界との連携を深め、「奈良の木」をブランドとしてさらに磨き上げる取り組みを、今後も強力に進めていかなければなりません。

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