万博観光を奈良へどうつなげるか ― 「大阪・奈良楽遊パス」から見える課題

大阪・関西万博を訪れた観光客を、いかに奈良県内へ誘導するか。
これは今年度の奈良県観光政策の大きなテーマの一つでした。

万博には国内外から多くの観光客が訪れます。関西にこれだけ大きな人の流れが生まれる機会はそう多くありません。だからこそ、万博を訪れた方々に奈良にも足を延ばしていただき、県内各地を巡ってもらうことが重要でした。

その取り組みの一つとして、奈良県と大阪観光局が共同で開発したのが「大阪・奈良楽遊パス」です。

このパスは、大阪と奈良を一体的に周遊してもらうことを目的に作られた観光商品です。QRコードを提示することで、2日間に限り一定料金で指定された観光施設を巡ることができる仕組みになっています。

主な商品は2種類です。
一つは大阪と奈良北部を巡る4800円のコース。
もう一つは大阪南部と奈良南部を巡る3500円のコースです。

北部コースでは、通天閣、水上バス、梅田スカイビルの空中庭園など大阪の観光施設に加え、奈良北部の観光名所や博物館など合計17施設が対象となっています。

また南部コースでは、大阪では堺市のシマノ自転車博物館や岸和田城、奈良では室生寺や金峰山寺、石舞台古墳、天川村の洞川温泉など、文化施設や観光地を含む19施設を巡ることができる内容となっています。

つまり、大阪観光と奈良観光を組み合わせることで、万博来場者に奈良県内まで足を延ばしてもらうことを狙った仕組みでした。

しかし結果は、残念ながら非常に厳しいものとなりました。

このパスは昨年2月14日に販売が始まり、約1年が経過しましたが、販売実績は624枚にとどまりました。
当初の目標は、1か月1200枚、年間では1万4400枚でした。
つまり、実績は目標の約23分の1という結果です。

さらに内訳を見ると、奈良北部が524枚、奈良南部は100枚にとどまっています。

奈良公園周辺には多くの観光客が訪れていますが、県内各地への広がりは限定的だった可能性が高いと言わざるを得ません。

特に印象的だったのは、奈良南部をレンタカーで周遊する商品です。
この商品については、販売実績が0件でした。

この事業には広報などを含めて約1000万円近い予算が投入されています。万博を訪れた観光客に奈良県内を周遊してもらうための取り組みとしてスタートしたことを考えると、結果は非常に厳しいものだったと思います。

しかし、ここで大切なのは失敗を責めることではなく、そこから何を学ぶかだと考えています。

奈良観光には長年言われてきた課題があります。
それは「人は来るが泊まらない」という問題です。

奈良公園や東大寺、春日大社など世界的な文化遺産を持ちながらも、観光客の滞在時間が短く、県内各地への周遊につながりにくいという構造があります。

今回の楽遊パスの結果は、その課題が改めて浮き彫りになったとも言えるのではないでしょうか。

では、どうすれば奈良県内への周遊を広げることができるのか。

大きなヒントは、「奈良に来る理由をもう一つ作ること」だと思います。

奈良公園だけでなく、県内各地に魅力的な体験や滞在の目的をつくること。そして、それらを線でつなぎ、面として広げていく観光政策が必要です。

交通、宿泊、体験、食、自然、歴史。
これらをどう組み合わせていくのかが、これからの奈良観光の鍵になります。

万博という大きな機会を通じて見えてきた課題は、奈良観光の未来を考えるうえで大きなヒントでもあります。

今回の経験をしっかりと検証し、奈良県内の周遊観光をどう実現していくのか。
奈良の観光政策をさらに前へ進めるために、この教訓を次の戦略に活かしていくことが重要だと感じています。


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